高田郁 角川春樹事務所 ハルキ文庫 時代小説文庫 2009/05

神田御台所町で江戸の人々には馴染みの薄い上方料理を出す「つる家」。店を任され、調理場で腕を振るう澪は、故郷の大坂で、少女の頃に水害で両親を失い、天涯孤独の身であった。大阪と江戸の味の違いに戸惑いながらも、天性の味覚と負けん気で、日々研鑽を重ねる澪。しかし、そんなある日、彼女の腕を妬み、名料理屋「登龍楼」が非道な妨害をしかけてきたが・・・・・・。料理だけが自分の仕合わせへの道筋と定めた澪の奮闘と、それを囲む人々の人情が織りなす、連作時代小説の傑作ここに誕生!


初っ端から牡蠣の土手鍋だの、七輪で焼いた牡蠣を醤油と酒で食べるだの、それだけで私の胃袋鷲掴みですよ。
それにしても、現代に生きる私にとって、茶碗蒸しといえば、具材を卵と出汁で固めたもの、というものしか想像できないのに、 江戸時代の江戸ではそれは一般的な“茶碗蒸し”ではなかったということに驚いた。高速道路も新幹線も、勿論ネットも無い時代、上方と江戸の隔たりは現代の私達が思うよりも遥かに大きかったんだろうなあ…。

亡き母親にしっかり育まれた味覚を武器に、必死に努力していく澪が健気です。そんな彼女がへたれたときには、フォローしてくれる周囲のひとびともまた微笑ましくて良い。出てくる人たちが皆真っ当にしっかり生きている感じ(悪役ポジションも居るけどね)。
小松原さまは何者なのか、失踪中の若旦那はどうしたのか、そして幼なじみの野江ちゃんとの再会はなるのか、未消化の伏線もあることだし続きも期待。

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