蒼天航路 13巻

2009年5月25日 読書
李学仁, 王欣太 講談社 モーニングKC 1998/07

天下の趨勢は二大勢力に統合されつつあった。片や黄河の南――。天子を奉戴し許の都を築いた曹操孟徳。片や黄河の北――。名だたる武将・軍師をそろえ最大勢力となった袁紹本初。未曾有の大戦乱・官渡大戦ついに開幕!


官渡決戦始まるよー。
劉備が下邳で謀反。曹操軍はまさしく四面楚歌の状態で、袁紹との戦いへ。おかげで軍師達は侃々諤々険悪ムード。この場面の曹操の激する郭嘉への謝り方はどうかと。赤面涙目になるくらい殿のマッサージは気持ちいいものなのか郭嘉。
劉備は謀反を起こし、袁紹と同盟したものの、また呆気なく曹操に追い散らされるのでした。いつものように兵は捨石、妻子は置いてけぼり。それだけでなく、今回は関さんも曹操に投降。関羽の投降に先駆けて、劉備の長子・劉冀が曹操に降っているのですが、この場面で曹操が彼に言う『乱世を争う者は妻子の生死に妨げられることはない したがって親のために死を覚悟することなど孝でも何でもない』という台詞、宛城でのいきさつを思えば、ずしりと重い言葉。
そして敗走し転がり込んだ袁紹軍で大軍を前に気を吐く劉備の姿は、蒼天劉備の名場面の一つだと思う。献帝に見切りをつけておきながら、天子を己の子か兄弟のように捕らえられるんだから(しかも自分の子供は捨てたも同然なのに)、不思議な人。その辺りは、細けえことはいいんだよ!って感じなのだろうか。
袁紹は堂々たる英雄の風格を見せているけど、曹操に負けた理由が、袁紹軍の黄河渡河の際の田豊の言葉に表されているように思います。
この巻で意外だったのは袁紹軍の二枚看板の一人、顔良。関羽に呆気なく斬られる最期は演義と同様でしたが、その死に様は恰好良かった。「侠者たちよ 天下を響動もせ」という最期のモノローグは、曹操の思惑がどういうものであろうと、関羽の生き方の指針が結局はブレないであろうことの暗示…だといいなあ。

本格的に袁紹との戦が始まる前に、張繍・賈詡の軍勢が投降。
河北に本拠を置く袁紹とは違い、中原を拠点とする曹操の周囲は敵だらけという戦況、尚且つ優勢時よりも劣勢時に投降すれば厚遇される、曹操は私怨よりも天下に度量の大きさを知らしめることを選ぶだろうという状況をがっつり読んで、張繍に曹操への投降を献策した史実の賈詡先生の眼力マジ半端無い。このあたりのいきさつは、自分の長男と甥、忠臣を死なせた相手を許す曹操の度量も凄い。
この物語では「曹操という人は私怨を完全に超越したところで天下と対峙しておるがゆえに曹操なのです」と賈詡に語らせて、袁紹との戦いどうこうというよりも、曹操という人は天下と対峙している人だということを殊更に強調していますね。そして土下座しながら頭を何度も打ち付けて、賈詡の助命を請う張繍どのは本当に賈詡のいい主だと思う…。

のちの建安七子のひとり、陳琳が檄文書いていました。蔡邕といい、蒼天の文人たちはどっかマッドな匂いがするなー。
作中で曹操が激怒したんだか感動したんだかその両方なんだか、とにかく大変なことになっていたこの檄文、確か『文選』に収録されているらしいですね。同時代のものだと三曹の詩文や、孔明の『出師表』と一緒に。読んでみたいけど、学生じゃなくなって大分経つ身には、新釈漢文大系とか懐かしくも手強過ぎる…。もっと学生時代に勉強しとけば良かった…。

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