蒼天航路 12巻

2009年5月19日 読書
李学仁, 王欣太 講談社 モーニングKC 1998/04

徐州奪回のために打ち寄せた曹操軍に対し、純粋戦士・呂布奉先は劉備玄徳を人質に、まさかの籠城策をとった。戦いは長引き、本格的な冬の到来を告げる雪が降った朝。曹操軍撤退の報に歓喜する呂布軍の足元が、河の水に浸されてゆく。曹操軍による冷酷無比な水攻めの開始であった。


陳宮――――ッ!!
荀攸の考案の大水計、配下武将らの反乱などにより、下邳城は陥落。呂布、陳宮、高順(陥陣営地味、だった…)らは処刑。
歴史ものの漫画や小説等を読むとき、読者の何割かは、史実のひとびとがどういう人生を辿ったか知りつつ、物語を追います。例えば、呂布ならば武勇は優れていたものの戦略に疎く、人望があるとはいえなかったために、下邳で曹操軍に追いつめられて投降、処刑された、という事跡を私達は知っているわけです。そういった道筋は外さずに、またあるときは情報を取捨選択しながら、どれだけ見ている側を夢中にさせるドラマを描くかということが歴史ものの醍醐味といえると思うのですが、その点で、蒼天の呂布と陳宮の哀しくも熱い末路の描き方は成功していると申せましょう。
致命的な水計にあってさえ、陳宮に策を求める呂布、それに「呂布殿は天下無敵でござる!!」と応える陳宮、反乱を起こした武将らに囚われた陳宮を見て切ない叫び声をあげ激昂したものの捕縛された呂布、捕らえられ「再び曹操に仕えよ」という曹操の申し出を一蹴し呂布と共に吊るされる陳宮…己と己の武力しか信じないで生きてきた呂布と、そんな呂布に智謀を捧げ尽くし、呂布に心許された陳宮の間にあったのは、愛と呼ぶべきものだと思う。
そして呂布の配下だった張遼は、人材大好き曹操様にヘッドハンティングされるのでした。

下邳攻めの際、城の牢に閉じ込められていた劉備が、自分達を牢から解放するために命を落とした老人に言った『おいらの名が天下に鳴り響いても おいらの命は名のないあんたの命とおんなじだーッ』という叫びが、いかにも劉備という感じ。地盤が無かろうが、出自が卑賤なものだろうが、戦が弱かろうが、この一言で劉玄徳なんだろうなあ。息子に『ホラ吹きといわれて生きるのもいいぞ!地と人は手に入らんが空だけはいくらでも手に入る!』と嘯いていたのもらしいっちゃらしいけどw
下邳攻めの後は曹操暗殺の勅を受けるものの、献帝では漢朝再興は無理と見切りをつけ、曹操が自分の袋に納まらない人物ならば戦場で殺すと、天意を悟った一族郎党引き連れて袁術討伐へ。また放浪か…。
なんでもできてなんでもやっちゃう、色んな事象が見えすぎる曹操と、何にもできないけれど何でも自分の袋に入れてしまえる劉備。どこまでも対照的なふたりは、それぞれの部下を見れば、その違いは一目瞭然だと思います。曹操の部下達は、主としての曹操に勿論惹かれてもいるんだけど、どこか畏れもあって、常に有用であることをぎりぎり突きつけられている感じ。それに対して関張の二人はボケとツッコミみたいなもんだもんな…「だめだこの劉備早くなんとかしないと…」的な感じもするし。曹操というか天下にとって有能な人じゃないと、曹操の部下は大変な気がする。その辺りも、劉備が人心を得た理由のひとつなのかも。

袁紹とガチンコ対決中だった公孫瓚はひっそりと終了のお知らせ。その最期の最期で何だかとんでもなくエロい人な印象を残したけど、正史よりはマシに描かれていた…はず…。
公孫瓚の滅亡により、袁紹は河北四州を掌握。そして物語は官渡での決戦に向うのでした。

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