海東青―摂政王ドルゴン
2009年3月9日 読書
井上祐美子 中央公論新社 2000/07
海東青、というのは小型の猛禽のこと。
主人公ドルゴンの父は女真族を統一したヌルハチ。この父からその聡明さを愛され後継者にとも目されるが、父の死去の際にまだ幼かったが為に女真族の大汗の地位は年長の兄ホンタイジが受け継ぎ、また後難を防ぐためにドルゴンの生母は殉死を強要される。ドルゴンが己の無力さを痛感する、この出来事から物語は始まります。
このドルゴンがなんというか哀しい。大局観をもった有能な少年から青年、そして幼帝の摂政となるのだけど、野心や権力欲は持ち合わせてはいないのに、国が大きくなるに従って生じる権力闘争や諸事に巻き込まれて、その度に心を擦り減らしていくような。生まれて初めて惚れたと思った女性(自分が摂政として仕える幼帝・順治帝の母)も政争の結果として娶ることになっても心満たされることはなく、山海関を越えて北京へ入城し、清という国の土台を造ったところで、もう役目は果たしたとばかりに死んでしまう、ドルゴンの人生は戦ばかりしていたというのに何だか儚い印象が残ります。
中華、というか漢民族の歴史は、周囲の異民族との戦いの歴史でもあります(三国志にも山越や烏丸が出来たっけ)。代々の王朝が異民族の来襲に脅威を覚えつつも、気がついたらフルボッコされてたり。この作品の文中にも出てきたけど、騎馬民族は男子は皆戦闘員だもんね。そら、文を以って貴いものとしてる漢民族は分が悪かろうよ。そんな異民族である女真族が、漢民族に代わって建てた“清”も、末期には洋夷に散々食い物にされた挙句に、東夷である日本と日清戦争、終には国は消滅という顛末を迎えるところが皮肉、というか歴史の妙味といえるでしょう。
読み始めてからしばらくは登場人物たちの名前が覚えられなくて苦労しました。神聖ローマあたりのみんながみんなカールだったりルドルフだったりフリードリヒだったりするのも紛らわしいけど、響きに全く馴染みがないのも大変です。
北京へ、そしてまだ見ぬ大地へ。遼東の空から大空に翔けあがる鷹の如くドルゴンは関を越え大帝国「清」を築いた。
海東青、というのは小型の猛禽のこと。
主人公ドルゴンの父は女真族を統一したヌルハチ。この父からその聡明さを愛され後継者にとも目されるが、父の死去の際にまだ幼かったが為に女真族の大汗の地位は年長の兄ホンタイジが受け継ぎ、また後難を防ぐためにドルゴンの生母は殉死を強要される。ドルゴンが己の無力さを痛感する、この出来事から物語は始まります。
このドルゴンがなんというか哀しい。大局観をもった有能な少年から青年、そして幼帝の摂政となるのだけど、野心や権力欲は持ち合わせてはいないのに、国が大きくなるに従って生じる権力闘争や諸事に巻き込まれて、その度に心を擦り減らしていくような。生まれて初めて惚れたと思った女性(自分が摂政として仕える幼帝・順治帝の母)も政争の結果として娶ることになっても心満たされることはなく、山海関を越えて北京へ入城し、清という国の土台を造ったところで、もう役目は果たしたとばかりに死んでしまう、ドルゴンの人生は戦ばかりしていたというのに何だか儚い印象が残ります。
中華、というか漢民族の歴史は、周囲の異民族との戦いの歴史でもあります(三国志にも山越や烏丸が出来たっけ)。代々の王朝が異民族の来襲に脅威を覚えつつも、気がついたらフルボッコされてたり。この作品の文中にも出てきたけど、騎馬民族は男子は皆戦闘員だもんね。そら、文を以って貴いものとしてる漢民族は分が悪かろうよ。そんな異民族である女真族が、漢民族に代わって建てた“清”も、末期には洋夷に散々食い物にされた挙句に、東夷である日本と日清戦争、終には国は消滅という顛末を迎えるところが皮肉、というか歴史の妙味といえるでしょう。
読み始めてからしばらくは登場人物たちの名前が覚えられなくて苦労しました。神聖ローマあたりのみんながみんなカールだったりルドルフだったりフリードリヒだったりするのも紛らわしいけど、響きに全く馴染みがないのも大変です。
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