陳舜臣 中央公論新社 2005/07/26

父曹操亡きあと、魏の文帝となった曹丕と詩人として名高い曹植の兄弟、そしてその子孫たちはどのような運命をたどるか。傑作『曹操』の続篇。


曹操の死から物語は始まり、魏王朝の終焉、晋王朝のはじまりで、物語は終る。物語の三分の二は皇帝となった曹丕とその同腹の弟曹植の運命を語り、残りは司馬氏の勢いに押され滅んでいく魏王朝を語っています。
あくまで曹一族の物語のなので、夷陵・街亭・五丈原といった有名な戦いや、劉備・孫権の二君主に関しての記述は結構あっさりめ。つか孫権は酔っ払いすぎ、絡みすぎだ。
その分濃いのが、曹丕と曹植の兄弟のつながり。
文帝となった曹丕はがんがん政敵やら対抗派閥を粛清していくのだけど、父の後継を争った曹植だけは殺せず、彼の前だけではあまつさえ大泣きします。曹植の方も、かつては詩文を介して心を通じ合わせていた兄が皇帝となり、側近に囲まれている現状に寂しさと不満を覚えている。
詩人でもある兄は己の詩文や人の文章を書き残していて、勿論詩人として名高い弟の文章も自身で書き写している。それを兄が死んだとき、形見分けとして兄の筆墨を受け取った弟は、それらの詩文の中に『洛神の賦』(この作中では曹植が曹丕の妻・甄氏に恋慕して書いたものとしている)までが絹に書かれて収められていることを知り、泣き伏すのです。哀しい。“魏”という王朝を保つために、政治は権力を皇帝に集中させ、皇族から権力を剥ぐために皇族同志が近しくなるのを禁じているので、兄が弟との兄弟の絆を保つための手段は、詩文しかなかったのだな、と。そして、その皇族に権力を与えないシステムの隙をつかれて、魏王朝は衰退していくわけで、何だかとても空しい。

ここのところずっと無双(5SPではなく、今時4エンパ)をやっているので、ついつい登場人物を無双ビジュアルで想像してしまい、読みながら相当な違和感を覚える(張コウとかね…)。がんばって横光三国志ビジュアルに補正しながら読了。

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